プカプカプカ

茶店には、可愛いコーヒーカップと可愛くないティーカップが並べてあった。
煙草のにおい。ふしぎと心地よい煙草のにおいがしていた。
カウンターに座っていてわかったことは、マスターが客に愛されているということ。

このカウンターがすき。

人はみんな共感がしたいんじゃないかと思ったりした。
梨木香歩の影響もある。
くだらないドラマも、くだらないパンケーキの行列も共感がもたらすもののように感じる。

その喫茶店は少しだけ、高度資本主義社会から外れているような気持ちにさせてくれる。
ここにいる人と話しても落ち込まずにすむような錯覚を覚える。
そういうお店を良い店と呼ぶことにしている。すきなお店。
ほんの30分のつもりが2時間近く居座って、その珈琲は美味しくて食欲をなくさせた。
歩いて井の頭線に向かう。
井の頭線がよくてわざわざ原宿ではなく渋谷にしたの。だから寒いけどまた少し歩く。
電車は東京で生活する上でとても重要な要素。

信号待ち。たくさんの人。わたしが空を見上げて月を見つけてもそれに倣うひとは誰もいない。

今日はいい日だった。
寒くて長い散歩と、すきなカウンターと、小説のおかげ。
ひとりで過ごした日をいい日と思えるのは、本当に嬉しいこと。